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医師の働き方改革とは?

安部内閣が提唱する「働き方改革」の一環として、2019年4月より「時間外労働の上限規制」が施行されました。
法律で定められた労働時間及び、時間外労働の規定は
「1日8時間、週40時間」「時間外労働の上限時間は月45時間かつ年360時間」
ですが、昨年度までは、労使間で「36協定」を締結すれば、時間外労働は実質無制限となっていました。

これに対して、今年度の改正では、36協定を結んだ場合でも上限を「年720時間」とし、
さらに、時間外労働について以下のように、細かく規定しています。
・単月で月100時間未満とする(休日労働を含む)
・連続する2カ月から6カ月平均で月80時間以内とする(休日労働を含む)
・原則で定められている月45時間(変則労働時間制の場合42時間)を上回るのは年間で6回までとする

では、医師の場合はどうなのでしょうか?

職種別で最も長時間労働の割合が多いのが「医師」です。
医師法における「応酬義務」や「公共性」から、医師の長時間労働は当たり前になってきました。
実際、1週間の労働時間が週60時間を超える雇用者の割合は、医師が41.8%と、他の職種と比較してずば抜けて高くなっています。

 厚労省の「医師の働き方改革検討会」では、2024年4月以降の【医師の時間外労働規制】を制定されることが決定しています。
個々の勤務医の時間外労働の水準としては、先ず医療機関を(A)(B)2つに分類し、さらに、研修医用に(C)水準を設けています。
(A)水準の医療機関=医療従事勤務医全般、(B)水準=地域医療確保のための特例的な水準、(C)水準=初期・後期研修医及び、高度技能育成対象の医師 と定義し、各水準の時間外労働は以下のようになっています。

◆時間外労働の上限規制「年960時間・月100時間」 …(A)水準

◆時間外労働の上限規制「年1860時間・月100時間」…(B)(C)水準
※例外として認めるが2036年を目途に例外は廃止する

◆連続勤務時間制限「28時間」、勤務時間インターバル「9時間」
※但し、(A)水準は努力義務。 (B)(C)水準では義務とする。

(B)(C)水準の「年1860時間」というと、過労死ライン(月100時間)をはるかに上回る時間外労働時間ですが、現状、病院勤務医の約1割が、この「年1860時間以上の時間外労働」をしているという調査結果があり、
地域医療の存続や医師の育成のために必要と認められた医療機関で勤務する場合のみ、年1860時間の上限が認められることになりました。

1860時間という数字は、今も、本当に瀬戸際のところで頑張っている医師がそれだけ多く存在するという現実を表しています。
既に基準内であったとしても、医師の健康と地域の医療を守るためには、
医師の増員や不可の軽減に関する対策を怠るべきではありません。

これから病院経営に求められること

医師の働き方改革は、今まで労働基準法の蚊帳の外であった医師にとって、
働き方を変える大きなチャンスであり、チャレンジでもあります。
厚労省が各病院に求めている「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」について、
以下に紹介します。
(参考資料)医師の働き方改革について https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000516867.pdf

【1】法令に則った労働時間の把握

まずは医師の在院時間について、客観的な把握を行う。ICカード、タイムカード等が導入されていない場合でも、出退勤時間の記録を 上司が確認する等、在院時間を的確に把握してください。
制服への着替時間や、研修時間は「勤務時間」とし、
また、当直についても、「(1)ほぼ診療が無い状態」であれば、労働基準監督署の許可を得たうえで、時間外労働ではないとすることができるが、「(2)一定の頻度で診療が発生。」「(3)日中と同程度に診療が発生。」する場合は、勤務時間にカウントされます。

【2】36(サブロク)協定の自己点検

36協定は、時間外労働を例外的に認めるもので、残業が少しでもある法人は、絶対に締結・提出しておかなければならいものです。36協定届を締結した際の時間外労働の上限は一般労働者の場合【年360時間(月45時間)】としており、更に繁忙期がある場合の特例として上限時間を【年720時間】としています。医師の働き方改革では、上限を【年960時間】としていますが、最終的には「年720時間以内」「年360時間以内」という一般の上限を意識して制度を整えていくことが必要です。

各病院は、必ず36協定の届を毎年提出する必要がありますが、厚労省による2018年9-10月のアンケート調査によると、回答した4173病院のうち、393件(9%)が、協定を締結しておらず締結の必要もないと回答しています。(朝日新聞デジタル2019年2月5日より) 尚、36協定違反には罰則があり、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。

【3】産業保健の仕組みの活用(産業医の活用)

労働安全衛生法に定める衛生委員会や産業医等を活用し、長時間勤務となっている医師、診療科等ごとに対応方策について個別に議論してください。長時間勤務の医師を月ごとに把握し、時間外労働が100時間になる前に、産業医の個別面談を実施しなければなりません。

【4】医師→他職種へのタスクシフティング(業務の移管)

・医療処置→看護師へ、  
・カルテ入力・書類作成→事務スタッフへ
点滴に係る業務、診断書等の代行入力の業務等については、原則医師以外の職種(看護師・医療事務)により分担してください。その為に、各診療科別に、看護師の「特定行為研修」の受講を推進し、業務分担を具体的に検討・実行してください。

【5】女性医師等への支援

短時間勤務など、「多様」で「柔軟」な働き方を推進するなどきめ細やかな支援を行ってください。

【6】その他の医療機関の状況に応じた「労働時間短縮」への取り組み例

・主治医制→チーム制または、複数主治医制への移行

・当直明け勤務の負担緩和
 →当直明けは休日または、午前勤務のみ、など

・勤務時間インターバルの設置
連続勤務時間規制28時間・勤務時間インターバル9時間の確保

・勤務時間外に行われていた会議や研修、
 病状説明などの職務の時間内実施。

・救急外来のかかり方など、患者の理解促進。

・ITの活用(情報共有、テレワークなど)

「ホワイトな病院」をいち早く目指しましょう!

ブラック企業という言葉があります。
16年以上、医師の人材紹介をしてる中で、何人もの医師から
「うちの病院は完全にブラック企業ですよ(だから転職するんです)」
という言葉を耳にしました。

医師の働き方改革をきっかけにして、法令を遵守し「ホワイト」な病院となることは、
病院が生き残っていく上での最重要課題であることに間違いないと思います。

医師の給与水準を保ちながら、人員を増やし「ホワイト化」していくには、
個々の病院ごとに、様々な課題が持ち上がると思いますが、
それをクリアしていかないことには、医師の確保ができず、
病院経営が危機に陥っていくことになりかねません。


恐らく、これを機に、36協定及び残業代の支払についても、より厳格になるでしょう。

病院の管理者の方は、ぜひ早急に「36協定」と「みなし残業」について、確認してください。
「みなし残業」時間を超える残業があり、それを支払っていない場合、
後々、未払い賃金をまとめて請求される事態にもなりかねません。

この件では更に気になる記事がありました。現行の未払い賃金の時効は、2年ですが、
2020年4月施行の改正民法では、5年まで遡れるようになる法案が準備されている
と報道されていますので、なおさら厳格な対応が必要となります。


医療機関側は、医師の労働時間の把握と、
36協定の毎年の届出、残業代の支払について、厳密に行う事が必要ですし、
医師側も、自分の労働時間を把握し「適正な時間内で仕事を終えるための工夫」
を自ら経営側に提案していく必要があります。


病院経営者はもちろん、勤務する医師側も、
医師の働き方改革の方向性を理解し、職場の改革に向けて
労使がタッグを組んで取り組み、課題を乗り越えていく。

その結果として、医療現場がより効率よく・働きやすいものになり、
多くの患者の命と、健康をより高いレベルで支えていくことができるように
なることを願っています。

最期に「医師の働き方改革検討会」では、様々なケースを検討・議論しています。
また、このコラムでは細かすぎると判断して省いて説明している部分もあります。

私の場合はどうなるの?といったご質問があれば、ぜひお気軽に当社にお問い合わせください。

株式会社mcプロダクツ キャリア・コンサルタント 石井 美和


(参考資料)
・厚生労働省医政局「医師の働き方改革について」
 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000516867.pdf
・医師の働き方改革大全(日経BP社)